権利擁護

権利擁護活動の提言

 高齢者の権利が侵害されがちな現況を懸念して、当協会が、状況の是正に向けて、何らかの貢献が出来ないか、模索・検討しています。

昨今、個人の権利の中でも、自己決定権が、場合によってはすこし高く評価され過ぎではないかと思うほどですが、高齢者についてはどうでしょうか。

(自己決定権とは、自分の生き方や生活について自由に決定する権利をいいますが、医療に限定しても、自分が受ける医療の種類の選択、医師や施術者を個別に選ぶ権利、尊厳死についての諾否等広範な内容を含みます。)

 

 年齢によって権利が変化するわけでもありませんが、高齢者や病気を抱えた方の判断力には、どうしても衰弱がみられますので、問題が生じます。加えて、戦前からの慣習に強く影響されていたり、その残滓を抱えている方は、「習慣で」、「なんとなく」とか、「世間体」、「遠慮」、「家族への期待」など、さまざまな思いが交錯するなかで、避けて通れない事柄について、選択や自己決定をすることになります。むろん「遠慮」や「世間体」を気にすることが十分「その人に相応しい」選択といえなくも無い場合もありますが、それが、本当に本人にとって望む所であるのか、どうかについての判定は容易ではないでしょう。

 

 現在、認知症の方は370万人ともいわれ、今後ますます増加すると予想されて

います。認知症であるからといって、一概に判断力なしとはいえませんが、判断の対象によっては、自己決定が困難なケースがあります。また、詐欺に遭う、望まないことを承服させられる、巧妙に隠蔽、あるいは、仕組まれた形で権利を侵害されるといったことが十分あり得ます。たとえ、愛情で結ばれた家族間であっても、本人の希望することが実現するとは限りません。この問題を考える場合、本人と、その家族は、現在の相続制度・法律のもとでは、本質的に、利害が対立する関係にあるとせねばなりません。

 

 このような立場に置かれた高齢者や認知症の方の権利をどう守るべきでしょうか。認知症の方については、成年後見制度の後見人が、被後見人の権利を守る仕組みができています。しかし、増加する需要を満たすには、後見人適格者の員数が不足している、また、後見人は、医療上の意思決定の代理はできないなどの問題は残されています。

 

 さらに重要な点は、認知症の方は、病気になるずっと前に自分の意思を実現したり、将来に備えて自分の意向を整理したり、伝えておくことだと思います。しかし、現実は、「将来は、予測しがたい(認知症になるはずはないと思っていたのに、なってしまった)」、「将来を考えるのがいや(主にこの理由でしょう)」といったことで、時機を逸し、本人の判断力の衰弱に至ってしまうというケースが多いのです。

 

 私たちは、「高齢者の医療・法律・コミュニケーション分野で十分な知識・経験のある者が、権利擁護者として日頃から(時間をかけ、対話を重ね、よい関係をつくったうえで)被擁護者の相談にのり、生活や将来の選択について助言をする役目を負うこと」を提案します。本人が生涯をかけて実らせた果実(経験、知識、資産)を、その方の意向にそって活用することは、その方のよい晩年の実現に肝要だと思います。

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                   ホームケアエクスパーツ協会

                     理事長   酒井忠昭

 

近年、慢性疾患やがんを患われておられる方々の療養の場所が、病院から在宅へと切り替わってまいりました。

 

  • 病院を離れて、自宅あるいは自宅に準じた施設で利用者の方々が生活の質(QOL)を高め「人生の主役」として生き生きと過ごせるようにするには、 在宅療養の方法に精通し、よく訓練された看護師や理学療法士等によるサービスが欠かせません。

 

  • 当協会は、地域における在宅療養を担うエクスパーツ(専門家)を育て、在宅療養の方法を研究し地域で共有する活動を続けております。  

 

  • さらに、病気や障害をもつ方々が、身体的な回復に加え、満足感や心理的ベネフィットの増進を得られるよう援助します。