講演会

第6回ホームケアエクスパーツ協会講演会

「皆で創る安心のコミュニティケア―ケアし、

ケアされる関係の確立」

2012122日 13:3016:30

国士舘大学梅丘校舎

 

 今回は袖井孝子氏(老年社会学会会長、お茶の水女子大学名誉教授)をお招きし、「皆で創る安心のコミュニティケア―ケアし、ケアされる関係の確立」をテーマに講演とグループ討論(ワールドカフェ方式)を行いました。司会は釘本祥子氏(桜ヶ丘サービス、代表)にお願いしました。

  

グループ討論は7グループ、202回のセッションで行い、ファシリテーターを釘本祥子、田中雪華、土川稔美、石井三智子、山内理恵、渡辺由美の諸氏にお願いしました(まとめは省略)。

<講演>

 以下、袖井先生の講演の要旨を記録します。

 

 テーマは皆で考えていただきたいと思い選びました。2年前、100歳を超えた男性が死後10数年を経て発見され話題になり、これをきっかけに多くの生死不明者が発見されて、家族や地域の絆が弱くなった象徴とされました。無縁社会という言葉が流行ったり、都会で居住者の50%以上が高齢者で、互いに関係の希薄な団地のありさまが報道されるなど、高齢者の孤立、孤独がクローズアップされています。しかし、2011311日東日本大震災後には反対のことを感じました。津波が襲ったとき犠牲になった消防団、老人を助けようとした人、避難を呼びかけ続けた役場の人の献身的な行動、親を亡くした子供をほとんど引き取った親族などに東北の人々の絆の強さを感じました。

 また、多くのボランティアが見られたのも印象的でした。これまでの日本は、身内には親切だが他人には冷たく、世間体を気にして異質なものを受入れない村社会でしたが、今回は違いました。日本には寄付文化は育たないと言われていましたが、今回の震災では高齢者の半分が寄付をし、寄付者の数は前代未聞だったといいます。日本ではこれまでチャリティやボランティアにたいする評価が低く、システムがありませんでした。カリフォルニアのある会社のトップに近い女性は専業主婦でボランティアに精を出していましたが、就職のとき経歴が評価され、会社の社会貢献部門に採用され、昇進して幹部になったといいます。最近、日本でも寄付税制が改正され、社会の変化の兆しです。

「新しい公共」は政府の財政逼迫が元々の理由ですが、新自由主義的な考えに基づいて民間の活力、市民や地域の活力、創造力を使おうとする考えです。政府の財政難、知恵の不足、官僚システムの限界という状況で提示されました。200910月の鳩山首相の所信表明の中で格調高く主張されました。新しい公共円卓会議がつくられましたが、内閣の消褪とともに、その後あまり実行されていないようです。前提として公益法人改革があります。従来の公益法人は団体、官僚、族議員の不透明な関係がありましたが、来年の末までに改革されることになっていて、その点は市民活動のやりやすい条件が整い、新しい気運が出てきました。

 社会の少子高齢化は明瞭です。日本は50年後人口が今の2/3になり、65歳以上が4割、14歳以下が1割を切ると言われます。後期高齢者は老年学会で昔から使われていた専門用語ですが、この数が増えるのは避けられない状況です。したがってこれらの方々のケア重要な問題です。ケアには2つの意味があります。ひとつは手段的意味で世話をする、面倒をみることで技術的な身辺介護の意味です。他は情緒的、心理的意味で思いやる、大切に思うことです。これまでは効率的、能率的にケアすることに重点が置かれ前者が強調されてきました。しかし、ケアされる側の安心感、満足感を考えると、それだけでいいのかとなります。要はケアし、ケアされる両者の折合いがつけられるケアは何かということです。また信頼関係をどう築くかが問題になります。

 多くの人が亡くなってゆくとき、どうしたらその方々が安らかに終末を迎えるか、社会で人々が共通の理解、目的、価値観を共有できるかが問われます。私の属する日本老年医学会の倫理委員会は今回終末期医療への立場表明をしましたが、2年間の議論の末「場合によっては医療撤退もありうる」という文言を加えました。医師の責任が追及されることを懸念しているのですが、社会に一定の合意ができなければならないと思います。

 スウェーデンの事情を視察しましたが、老人病棟では最終的には医師が決断する。リビングウィルがあっても、家族の希望があっても医師が患者のQOLを優先して決めるという合意ができているということでした。日本でもこれから議論しなければならないと思います。(酒井記)

近年、慢性疾患やがんを患われておられる方々の療養の場所が、病院から在宅へと切り替わってまいりました。

 

  • 病院を離れて、自宅あるいは自宅に準じた施設で利用者の方々が生活の質(QOL)を高め「人生の主役」として生き生きと過ごせるようにするには、 在宅療養の方法に精通し、よく訓練された看護師や理学療法士等によるサービスが欠かせません。

 

  • 当協会は、地域における在宅療養を担うエクスパーツ(専門家)を育て、在宅療養の方法を研究し地域で共有する活動を続けております。  

 

  • さらに、病気や障害をもつ方々が、身体的な回復に加え、満足感や心理的ベネフィットの増進を得られるよう援助します。